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プルーンと骨粗しょう症

骨が弱くなり、骨折しやすくなる骨粗しょう症。
とくに女性に多く見られ、自覚症状があらわれにくいため、気付かないうちに進行していることも。
そんな骨粗しょう症の基本から、骨粗しょう症を予防するプルーンの働きまでをご紹介します。

骨粗しょう症の基本

骨粗しょう症とは

私たちの骨は主にカルシウムなどのミネラルとたんぱく質でできています。そのカルシウムなどのミネラルの密度を表すのが骨密度(骨量)です。骨密度は、年齢とともに変化していきます。男女ともに40~50代以降減少していく傾向にありますが、とくに女性では女性ホルモンの影響により閉経後の骨密度の低下が著しいことが知られています。また、骨はコラーゲンというたんぱく質によって支えられており、コラーゲンの量や構造を表すのが骨質です。骨質も加齢に伴い劣化すると考えられています。つまり、骨粗しょう症とは、骨密度の低下と骨質の劣化により、骨の強度が下がってしまった状態のことを指します。

骨折していないし異常も見られないという場合でも、若年成人の平均値と比べて骨密度が70%以下になると骨粗しょう症と診断されます。つまり、誰もが長生きすればいずれは直面する可能性があるのが骨粗しょう症なのです。

研究コラムそれ、骨粗しょう症の危険信号かも!?

関係ないと思っているその症状。実は、骨粗しょう症が原因かもしれません。

腰痛

ただの腰痛だと思っていても、骨の異常によるものかもしれません。骨が弱くなると、尻もちやくしゃみなどにより少しの衝撃が加わるだけで背骨がつぶれてしまうことがあります。これを圧迫骨折といい、背骨が圧迫骨折を起こすと腰や背中が痛くなります。骨粗しょう症が原因による痛みにもかかわらず、そうとは気が付かないことがあるのです。腰痛がひどい場合は、我慢せず一度病院で検査を受けてみてください。

背が曲がる、身長が縮む

骨粗しょう症の人は背骨の変形や骨折などによって極端に前かがみの姿勢になったり、身長が著しく縮んだりします。ある程度は加齢による自然現象ではありますが、痛みを伴う場合や若いころより4センチ以上身長が縮んでいる場合は骨粗しょう症の影響かもしれません。

息切れしやすい

少しの運動で呼吸が苦しくなる、激しく息切れするなんてことはありませんか?もしかすると、単なる体力の低下ではないかもしれません。骨粗しょう症によって背骨が圧迫されつぶれることにより背中が曲がると、臓器が圧迫され、肺活量の低下と息切れが起きやすくなる可能性があります。

胸やけ、食事量の減少

背骨が曲がることで胃が圧迫され、そこから食欲の低下にもつながる可能性があります。少しの食事量でもすぐに満腹になってしまう場合、骨粗しょう症の初期症状かもしれません。また、胃が圧迫されると、胃酸が逆流し、胸やけを起こすこともあります。

骨粗しょう症の悪影響

骨粗しょう症は自覚しにくい病気ですが、知らないうちに骨がもろくなりちょっとしたことで骨が折れてしまうようになります。とくに高齢者の骨折は、単なる骨折にとどまらず、さまざまな悪影響を及ぼすことが分かっています。

健康寿命を縮める

太ももの骨(大腿骨)を骨折すると、治療によって骨折自体は完治しても元の生活に戻れる患者は約半分と言われており、何らかの運動機能障害が残る可能性が非常に高いことが知られています。つまり、骨粗しょう症は寝たきりや要介護につながりやすく、健康寿命を縮めてしまいます。

骨折や転倒は、とくに女性において要介護の大きな原因となります。要介護になった原因を調べた国の調査を男女別で見てみると、なんと女性では認知症に次いで骨折・転倒が2番目に多いのです。

寿命が延伸し、超高齢社会と呼ばれる現代の日本において、健康的な生活をどれだけ長く続けられるかが重要視されています。超高齢社会を元気に生き生きと過ごすためには、骨の健康を維持することがとても大切なのです。

サルコペニアやフレイルとの合併でよりハイリスクに

加齢による骨格筋の減少に伴い身体機能に弊害が生じるサルコペニアや、身体機能や認知機能に低下が見られ要介護の一歩手前と言われるフレイル。そんなサルコペニアやフレイルと骨粗しょう症が重なり、大きな健康課題となる例が増えています。骨格筋量や身体機能が低下することで転倒リスクが増大し、骨密度の低下が相まって容易に骨折してしまうことがあります。骨折により寝たきりになってしまうことで、身体にだけでなく、精神的、社会的な健康にも悪影響が生じ、生活の質が低下し、フレイルが助長されることも示唆されています。

骨粗しょう症の原因と予防

骨粗しょう症の最も大きな原因は加齢です。そして女性は閉経によってもリスクが高くなることが知られています。このような避けられない変化が原因となる骨粗しょう症は、男女ともにかかりやすい疾病です。

加齢

骨密度は成長期に上昇し、男女ともに20歳前後でピークを迎えます。40代ごろまでは維持され、そこからはだんだんと年を重ねるごとに低下していき、骨粗しょう症が起こりやすくなります。

閉経

骨粗しょう症はとくに女性に多い病気ですが、その原因は女性ホルモンの変化にあります。女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える働きがあります。そのため、閉経を迎えて女性ホルモンの分泌が減少すると、急激な骨密度の低下につながります。

 

さらに、近年では薬や疾病の影響といった加齢や閉経などとは異なる原因により骨粗しょう症になるケースが知られるようになりました。とくに糖尿病や慢性腎臓病は骨粗しょう症のリスクが高まる疾病として注意が必要です。

糖尿病

糖尿病は、骨質を劣化させることで骨粗しょう症のリスクを高めることが分かっています。また、糖尿病合併症である神経障害によって身体の末端の感覚が鈍くなることや、網膜症によって視力が低下することで転倒しやすくなり、骨折のリスクが増加する可能性があります。

慢性腎臓病

近年、軽微な腎機能低下を放置すると、透析が必要となるような重度の腎不全につながるだけでなく、全身のさまざまな部位の健康に影響することが明らかになっています。この軽微な腎臓の機能低下が長く続く状態を慢性腎臓病と言い、健康寿命の延伸のために無視できない疾病として注目されています。慢性腎臓病は脳や心臓だけでなく、骨にも関係します。腎臓の機能が低下すると骨の材料であるカルシウムの吸収効率が悪くなり、骨密度が低下することが分かっています。

ほかにも、栄養バランスの偏りによってカルシウムやビタミンDなどの栄養素が不足すると健康な骨がつくられなくなります。また、加工肉などに多く含まれるリンを過剰に摂取するとカルシウムの吸収が妨げられることがあります。さらに、運動不足や喫煙、過度の飲酒など、乱れた生活習慣は、骨にも悪影響をもたらすことが分かっています。

 

一度低下した骨密度を大幅に回復させるのは非常に難しいことです。だからこそ、骨粗しょう症の予防のためには可能な限り若年期に骨を丈夫にして「骨の貯金」をしておくこと、そして乱れた食生活や運動不足といった生活習慣などの避けられる原因は減らしていくことが大切です。年代別のポイントを押さえて、より効果的に骨粗しょう症を予防しましょう。

骨粗しょう症予防のポイント

10代

人の一生で唯一骨密度が増えていく成長期。カルシウムやたんぱく質など、骨の材料になる栄養素をしっかりととりましょう。この時期に骨密度を高めておくと、将来の骨粗しょう症の予防につながります。

20代〜30代

骨密度は、20歳ごろにピークに達し、40代ごろまでは大きな変化がなく維持されます。栄養バランスの良い食事や適度な運動など、正しい生活習慣を身につけることで、骨の健康を保ちましょう。

40代〜50代

加齢やホルモンバランスの影響で骨密度が減少していきます。定期的に骨密度測定を行うことで、骨粗しょう症の早期発見に努めましょう。

60代〜

背中や腰に痛みがある場合は病院の受診を。ちょっとした転倒でも骨折につながりやすいので、日々の生活の中でも注意が必要です。骨だけでなく、筋肉やバランス感覚も衰えがちになり、つまずきやすくもなるので気を付けましょう。毎日少しずつ身体を動かすことが大切です。

全世代を通してのポイント

骨に必要な栄養素をしっかりととる
(カルシウム、たんぱく質、ビタミンDなど)

(カルシウム、たんぱく質、ビタミンDなど)

過度なダイエットは控え、
適性体重を維持する

適正体重を維持する

運動を習慣化する

運動を習慣化する

喫煙と過度の飲酒は控える

喫煙と過度の飲酒は控える

プルーンの骨粗しょう症予防効果

骨を健康に保つためには、カルシウム、たんぱく質など骨の材料となる栄養素をきちんととり、適度に身体を動かすことが基本ですが、プルーンの摂取も有用であることが報告されています。ペンシルベニア州立大学で行われたヒト臨床試験をご紹介します。

研究の詳細

試験方法

55~75歳の閉経後女性を対象に、ドライプルーンを12カ月間摂取してもらい、骨密度や骨折リスクの変化を評価しました。

試験結果

ドライプルーンを摂取しなかった比較対照グループの中でも、とくに骨密度が低い人たちは、12カ月目に股関節の骨密度が約1%減少していました。一方、ドライプルーンを50gまたは100g摂取した人たちの減少率はその半分以下に抑えられ、骨密度が維持されたことが分かりました(グラフ)。

加えて、骨の質の指標と生活習慣や病歴などのデータから10年以内に骨折するリスクを計算したところ、比較対照グループは6カ月目、12カ月目にリスクが増加しましたが、ドライプルーンを摂取したグループでは変化がありませんでした。

これらの結果から、プルーンは閉経後女性の骨の健康の維持に有用である可能性が強く示されました。


 

出典:Prunes preserve hip bone mineral density in a 12-month randomized controlled trial in postmenopausal women: the Prune Study. Am J Clin Nutr, 2022, 116(4): 897-910.

 

プルーンが骨粗しょう症予防に効果的な理由

私たちの健康を支えるさまざまな栄養素を含むプルーン。骨粗しょう症の予防に効果的であると考えられる2つの成分についてご紹介します。

プルーンに含まれる栄養素・有用成分

ポリフェノール

5000種類以上あると言われているポリフェノールはそのどれもが高い抗酸化作用を持ち、さまざまな健康効果が期待され、注目を集めています。骨密度の減少には酸化ストレスが関係しているとされており、プルーンに含まれるポリフェノールはその抗酸化作用によって酸化ストレスによる骨への悪影響を抑える可能性が示されています。

有機酸

骨の維持に欠かせないカルシウムですが、実は人間の体内では摂取した20~30%程度しか吸収されません(成人の場合)。その理由は、胃で溶けたカルシウムが腸の中で析出(溶けていたものが出てくること)し、吸収されにくい形になってしまうからです。プルーンに含まれるキナ酸やリンゴ酸といった有機酸は腸でのカルシウムの析出を抑制し、その結果、カルシウムの吸収率を高めることが分かっています。
出典:in vitro消化モデル・腸管吸収モデル系におけるプルーンのCa吸収促進作用. 第61回日本栄養・食糧学会大会(2007年)

プルーン

研究コラム治療率の低さ 地道な予防がカギ

骨粗しょう症の患者数は非常に多いですが、治療をしている人はそのうちの2~3割だと言われています。自分が骨粗しょう症だと気付いておらず、治療をしていないということもありますが、それ以外に治療の継続率の低さが問題視されています。骨粗しょう症だと分かり、治療を始めたにもかかわらず、半年や1年足らずで治療をやめてしまうことが多いと言われています。

治療の継続率が低い理由のひとつは、結果の見えにくさです。成果が出るのは半年~年単位で見たとき。しかも、骨の強度は目に見えて改善するということはありません。骨密度が改善したとしても、数字としては微々たるものです。上記で紹介した研究でも、対照群は12カ月間で約1%の減少率、プルーンを摂取した群の抑制幅も非常に小さいものでした。しかしその小さな差が、10年、20年と積み重なると大きな差となります。たとえば40代から30年間、1%ずつ骨量が減少すると、70代では骨粗しょう症と診断されてしまうかもしれないのです。

いつまでも元気な毎日を過ごすためには骨密度に対する小さな改善を継続することが非常に重要なのですが、日々の治療を継続するモチベーションが保てず、治療を断念してしまう人が多いのが現状です。

また、自覚のしにくさも治療をやめてしまう原因のひとつ。骨粗しょう症の初期で、骨折による強い痛みといった症状がなければ、つい軽く見てしまうのです。骨粗しょう症と診断されたら根気よく治療を続けることが大切ですが、骨粗しょう症になる前から、地道に予防にとり組む方が理想的と言えるでしょう。若いうちから毎日の生活の中で骨に良い習慣を身につけておけば、年齢を重ねたあとの苦労が減らせるかもしれません。

参考文献

  1. 令和4年版高齢社会白書(全体版)
  2. 骨粗鬆症 検診・保健指導マニュアル 第2版. ライフサイエンス出版株式会社, 2014.
  3. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版. ライフサイエンス出版株式会社, 2015.
  4. 骨粗鬆症の疫学とサルコペニア・フレイル. 日内会誌, 2022, 111(4): 724-731.
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  6. 最新骨粗鬆症. ライフサイエンス出版株式会社, 1999.
  7. 慢性腎臓病患者における骨粗鬆症とサルコペニア. 老年内科, 2021, 3(5): 639-648.
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