プルーンライブラリー

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プルーンと高血圧

日本でもっとも患者数が多い病気である高血圧。健康に長生きするためには適切な血圧コントロールが欠かせません。
そんな血圧の基本から、血圧をサポートするプルーンの働きまでをご紹介します。健康な身体づくりのためにお役立てください。

 

高血圧の基本

血圧とは

血圧とは、心臓から全身に送り出された血液によって血管の壁にかかる圧力のことで、心臓が収縮したり拡張したりすることで発生します。血圧は心臓から押し出される血液量(心拍出量)と抹消血管内の血液の流れやすさ(血管抵抗)によって決まります。心拍出量が増えたり、血管の収縮などで血管抵抗が大きくなったりすると、血圧は上がります。

心臓が収縮して血液を勢いよく押し出すときに血圧が最も高くなります。このときの血圧を収縮期血圧と言い、一般的に「上の血圧」と呼ばれます。一方、戻ってきた血液で心臓が拡張し血液の流れが緩やかになると、血圧は最も低くなります。このときの血圧を拡張期血圧と言い、「下の血圧」と呼ばれます。心臓が収縮、拡張を繰り返すことで、全身に血液がスムーズに流れるようになっています。

高血圧の基準

高血圧は、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合、あるいはこれらの両方を満たす場合に診断されます。「高血圧の一歩手前で、注意が必要なレベル」を高値血圧や正常高値血圧と言い、高血圧予備軍であることを示しています。
また、加齢や生活習慣の影響により動脈が硬くなると、収縮時の大動脈のふくらみが少なくなります。そのため、上の血圧は上がりやすく、下の血圧はむしろ低下して、上の血圧だけが高い、(孤立性)収縮期高血圧と呼ばれる状態に陥り、治療の対象となります。

 

研究コラム「サイレントキラー」と呼ばれる高血圧

高血圧は日本でもっとも患者数が多い病気で、約4300万人いると推定されています。しかしながら、その中でも血圧を適切にコントロールできているのはわずか1200万人程度と考えられており、残り3100万人の中には、治療をしても目標の血圧に達していない人や、高血圧と知っていながらも治療をしていない人、自分が高血圧であると自覚していない人が含まれています。

高血圧は常に血管に負担がかかった状態です。そのため、血管が傷つきやすくなり、血中を流れる悪玉コレステロールが血管の壁に沈着しやすくなります。すると、血管が厚くなり、動脈硬化を発症します。動脈硬化が進行すると、脳卒中や心臓病、腎臓病など重大な病気になる危険性が高まります。

このように高血圧は怖い病気ですが、特有の自覚症状がないため、軽視されがちです。頭痛やめまい、肩こり、耳鳴りなどは高血圧の症状の可能性がありますが、「ちょっと疲れているだけ」などと思い込んでしまい高血圧だと気づかないことが多いのです。

そうしたことから、高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と呼ばれています。ほとんどの人で自覚症状がないにもかかわらず、脳や心臓の血管に動脈硬化を引き起こしたり、腎臓の働きが悪くなることもある決して侮れない病気なのです。日本では年間10万人以上が高血圧が原因で亡くなっています。目立った症状がないからといって放置せず、高血圧を指摘されたときや体調が気になるときには早めに医師に相談しましょう。

 

高血圧の原因と改善方法

高血圧の原因

日本人の高血圧の約8~9割は、食塩の過剰摂取、肥満、遺伝的素因(体質)などさまざまな要因が組み合わさって起こります(本態性高血圧)。この場合は、食生活を中心とした生活習慣の見直しが予防・改善に非常に重要です。これに対し、病気や薬が原因で起こる高血圧もあります(二次性高血圧)。この場合は、原因を明らかにしてそれを取り除くことができれば、血圧の正常化が期待できます。

高血圧の改善方法

生活習慣を見直すことで、高血圧の予防や改善が期待できます。具体的には減塩・肥満の予防や改善、節酒、禁煙などが挙げられます。運動することや野菜・果物を積極的に摂取するなどの食事パターンの見直しも有効です。その他、防寒や情動ストレスのコントロールも高血圧の改善に寄与するとされています。このような生活習慣の見直しはどれかひとつだけではなく、組み合わせて行うことでより効果が大きくなります。

 

家庭での血圧コントロール

血圧コントロールには日々の家庭での血圧測定が重要になります。測るタイミングは起床後と就寝前の2回、決まった時間に測定するのが良いとされています。朝は起きて1時間以内、トイレを済ませ、食事や薬を飲む前に測るようにしましょう。適切な温度の部屋で、正しい姿勢、リラックスした状態で座って測ることが大切です。家庭で測定した血圧は、病院で測るよりもやや低めの値を示す傾向があり、収縮期血圧が135mmHg以上、拡張期血圧が85mmHg以上は高血圧に該当します。毎日継続して記録をとり、血圧の管理や受診時の参考にしましょう。

プルーンの高血圧改善効果

高血圧の予防・改善に欠かせないカリウム

高血圧の予防・改善に効果的な栄養素として、体内の余分なナトリウムの排出を促す働きがある「カリウム」が挙げられます。
アメリカでは、1食あたり350mg以上のカリウムと140mg以下のナトリウムを含有する食品に、「カリウムの良い供給源であり、ナトリウムの少ない食品は高血圧や脳卒中のリスクを低減させる可能性がある」というヘルスクレーム(健康強調表示)が認可されています。
また、日本人の食事摂取基準では、高血圧などの生活習慣病予防のために摂取を増やすべき栄養素としてカリウムの目標量が設定されていますが、成人男女ともに摂取量が不足しているのが現状です(グラフ)。

 
プルーンにはカリウムが豊富に含まれる

ドライプルーンから水で栄養成分を抽出したプルーンエキス(54g)は、約500mgのカリウムを含んでおり、アメリカのヘルスクレームの条件を満たしています。
また、日本人の「カリウムの目標量と実際の摂取量」(上記グラフ)においては、女性の場合、プルーンエキス(54g)に含まれるカリウムを実際の摂取量に加えると目標量を大きく上回ります。男性においても、プルーンエキス(54g)の摂取で目標量に近づけることができます。

これらのことから、プルーンエキス(54g)の摂取は、高血圧の予防・改善に対して効果的であると期待できます。実際にプルーンエキスの高血圧改善効果を調べた研究をご紹介します。

研究の詳細

試験方法

血圧が高め※の日本人成人男女を対象に、プルーンエキスもしくはプルーンエキスに味や色を似せた食品(対照食)を12週間(1日あたり54g)摂取してもらい、摂取前、摂取6週間後、摂取12週間後に収縮期血圧を評価しました。

※血圧が正常高値血圧(研究当時の基準)およびⅠ度高血圧の方
  正常高値血圧:収縮期血圧130~139mmHgかつ/または拡張期血圧85~99mmHg
 Ⅰ度高血圧  :収縮期血圧140~159mmHgかつ/または拡張期血圧90~99mmHg

試験結果

プルーンは血圧を低下させる

群間に有意差はありませんでしたが、プルーンエキスを摂取したグループは、摂取前に比べて収縮期血圧が有意に低下しました(グラフ)。

研究コラム役立てたいナトカリ比

ナトカリ比とは、ナトリウムとカリウムのバランスのことです。ナトリウム(食塩)の過剰摂取は高血圧の大きな原因ですが、カリウムは体外にナトリウムの排出を促します。そのため、ナトリウムの摂取量を減らすことに加えて、カリウムの摂取量を増やすことで、より効果的な高血圧対策となることが分かっています。
カリウムは、野菜や果物に多く含まれています。水に溶けやすく、調理によって流出しやすいので、そのまま食べたりスープやジュースにして汁ごととるようにしましょう。

参考文献

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